あなたにも起こるかもしれない相続問題の実例についてお話します。

親が離婚している家族
~家を出て行った母にも未婚の子供の財産を受け取れるのか?~

今回は、がんで余命宣告をされた55歳の独身男性Aさんからの相談です。
Aさんには父親と弟、妹がいました。
そしてもう1人、Aさんが小学生の時に離婚した母親もいました。

母親が家を出てからは、父親が子供3人の世話をしてきました。Aさんも新聞配達などをして、家計を助ける為に一生懸命父親をサポートしてきました。
高校を卒業してからは、小さい時からの夢であった板前を目指し今では自分の店を持てるまでになったそうです。
そんなAさんが、突然余命宣告をされました。
そして、相続について話があると私のところの相談にきました。

全財産は、今まで育ててくれた父親に!!

Aさんには今までに築き上げてきた財産があり、Aさんが亡くなった場合は相続人である父親と母親が相続することになります。しかし家族を捨てて家を出て行った母親には財産を渡したくない。今まで子供達を必死に守り育て上げてくれた父親に、全ての財産を渡したいという思いがAさんにはありました。ただ遺言で全ての財産を父親に相続させると書いても、相続人である母親にも遺留分(遺留分減殺請求を行うと法定相続分の1/3)があり、父親に全ての財産を渡すことは出来ません。

それから半年後、Aさんは亡くなりました。
Aさんの財産は全て父親が相続しました。

後日談

Aさんが亡くなる1ヵ月前に、Aさんと母親が再会しました。私も同席しました。
Aさんに代わり、私がAさんの病状と相続について話しました。突然のことで母親は泣き崩れ、今までのことをAさんに詫びていました。
Aさんは今まで育ててくれた父親に財産を全て遺したいので、相続を放棄することを母親にお願いしました。母親も「今の自分には相続を受けるつもりはない」と相続放棄を受け入れました。

Aさんの葬儀の日、肩を震わせ手を合わせている母親がいました。自分より先に逝ってしまった息子。離れていても親子は親子ですね。

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