あなたにも起こるかもしれない、相続問題の事案についてお伝えします。

事案① 知らなかった相続人の存在

この事案は稀なケースですが、実際にあった相続問題です。

被相続人である父親が亡くなり、相続人は配偶者である妻と長女Aと長男B、そして前妻との子供である長男Cと次男Dということが分かります。
法定相続分で分けると下記のように財産を相続することになります。
・配偶者…1/2
・子供たち…残りの1/2を4人で分ける(1/8ずつ)
※前妻には相続権はなし

では、何が問題だったのでしょうか。

父親が再婚だった事を誰も知らなかったのです。
詳しい事情は分かりませんが、被相続人である父親は再婚であることを妻に言わなかったそうです。父親が残した財産は今の家族で相続するものだと思っていたのですが、戸籍謄本を見て父親が再婚である事実を初めて知り愕然としたそうです。
前妻とは次男Dが2歳の時に離婚したそうで、50年も前のことです。
遺言書も無かったので、当然前妻との子供達と連絡を取り遺産分割協議書を合意の上作成し、押印してもらわなければなりません。幸いにも前妻の子供達とは連絡が取れ、法定相続分の1,250万円を現金で相続することで各々合意が取れました。

この事案の場合は、家屋を売却することも無く相続財産の預貯金の中から前妻の子供達に財産を渡すことが出来ましたので、大きな問題にはなりませんでした。ただ、50年間何も知らなかった妻や会ったこともない兄弟と、同じ割合で父親の財産を分けなければならなかった子供達が受けたショックは大きかったと思います。
人にはそれぞれの人生があると思います。ただ残された人(家族)のことも考え、生前に伝えなければいけないことはしっかりと伝えることが大切だと思います。そして遺言書に、前妻との間の子も含めて財産をどの様に分けるかをしっかりと残すことが重要です。どうしても直接伝えることが出来ないのであれば、遺言書の付言事項* に今までの経緯やその様に財産を分けることを決めた理由等を書き残すことをお勧めします。

*付言事項…遺言書において相続人等に遺すメッセージ
遺言書を書くに至った経緯、相続人に伝えておきたい希望事項、感謝の言葉等を記載することができる(ただし法的効力はなし)

事案② 連れ子を襲った悲劇

この事案はとてもつらい結末になりました。

長男は2歳の時に実母を亡くし、その後父親が再婚しました。2年前に父親が亡くなり、その後は継母と二人で生活をしてきましたが、今年その継母も亡くなりました。
このような場合は子である長男が全ての財産を相続することになるはずなのですが、結論は継母の姉が相続することになってしまいました。理由は、長男と継母が養子縁組をしていなかったため、長男に相続権がなかったからです。
最終的に、預貯金の2,000万円と不動産の共有部分の2,500万円分の現金を継母の姉に渡して相続は完了しました。

この事案の問題点は、再婚をした時に養子縁組をしていなかったことです。法律では、何十年一緒に生活した事実があっても、血が繋がっていない場合は養子縁組をしていないと親子関係と認められないということです。
もし思い当たる方がいらしたら、一度戸籍を調べてみては如何でしょうか?

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