平成元年にオープンしたトヨタ博物館は、今年で開館30周年を迎えます。
30周年記念式典で、布垣直昭館長が「30年の積み重ねがあったからこそできたリニューアルだ」とおっしゃっていましたが、一体どのように生まれ変わったのでしょうか。
新設された「クルマ文化資料室」を取材してきました。

トヨタ博物館

トヨタ博物館は愛知県長久手市にあります。
東部丘陵線「芸大通駅」から徒歩で約5分。駅のホームからでもトヨタ博物館が見えるくらいなので道に迷う心配はないでしょう。

トヨタ博物館「文化館」の2階。
クラシックカーの展示の先に「クルマ文化資料室」の入口があります。入口にむかって右手側の壁には現在の展示物の一覧と、館内でここにしかない「触れる展示」もありますのでぜひチェックしてみてください。

「移動は文化」

クルマ文化資料室

今回のリニューアルのテーマは「移動は文化」。
以前は国産車と欧米車というように展示が分かれていたのですが、時代も変わり「日本と外国で分ける必要はあるのか?」、「自動車文化そのものの移り変わりがわかるようにするべきだ」という思いがリニューアルのきっかけとのことです。

「クルマ文化資料室」には実物の「クルマ」は1台もありません。「クルマ」と人が生み出してきた文化にスポットライトを当てた展示になっています。
あのレオナルド・ダ・ヴィンチも挑んだ「自走車」の夢。数百年の後に「自動車」を実現させてからというもの、人類は「クルマ」とともに様々な文化を生み出し、そして育んできました。
その時々の時代と文化を写し取った品々・・・かつて流行した貴重な「カーマスコット」からポスターや雑誌、切手など実に約4,000点が展示されています。全てをご紹介することはできませんので、ここでは個人的におすすめしたい見所を2つご紹介させていただきたいと思います。

交通事故切手!?珍しい自動車切手が多数

切手の展示台

50~60代の方の中には、幼い頃切手収集に熱を上げた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。室内の中央あたりに展示されているのは、自動車がデザインされた世界中の切手の数々。当時の人気車などがあしらわれた様々な切手が1,200種も展示されています。
その中でも特に新鮮なのが、安全運転啓発のために発行された、交通事故のワンシーンを描いた切手ではないでしょうか。
自動車の普及とともに、交通事故や運転マナーなどが社会問題となっていく中で発行された切手ですが、人と自動車の文化を表す珍しくも興味深い展示です。
ちなみに展示台には引き出しがあります。その中にも切手がたくさん展示されていますのでお見逃しなく!
なかなか見る機会のない世界中の切手を眺めているだけで、1日が終わってしまいそうです。

歴代の「クルマ」のその先に・・・

ミニチュアカーの展示

資料室の中でひときわ目を引くのが、資料室を横断するほど長いミニチュアカーの展示です。
約800台が展示されていて、世界初の自動車から現在のものまで様々な自動車が時代・国ごとに並んでいます。
時代の変化と共に移り変わっていく自動車のデザインが一望できる上、周辺の展示物とも時代を合わせるプロのこだわりが垣間見えます。気になった「クルマ」があれば少し立ち止まって周りを見渡し、その「クルマ」が生まれた時代の文化を見て取るのもおもしろいかもしれません。
そして展示の一番端、現在の「クルマ」のその先にあるものは・・・資料室の遊び心が感じられる展示に思わず笑ってしまいました。ぜひご自身の目で確かめてみてください!

まとめ

実際に訪れてみて、「自動車の資料室」ではなく「自動車を通して歴史をふり返る資料室」なのだということがひしひしと感じられました。
競争の中で姿を消していった自動車メーカーのエンブレムが展示されていたり「自動車業界」の歴史はもちろんのこと、自動車をテーマにした映画やゲームにおもちゃなど、「クルマ」と人がどんな文化を生み出してきたかがよくわかりました。
史料として珍しいものから最近のおもちゃまでが展示され、車好きの方からお子様連れのご家族まで楽しめるようになっています。展示物は定期的に入れ替えられるそうなので、訪れるたびに新しい発見があるのではないでしょうか。

昨今の自動車業界は「100年に一度の大変革期」と言われています。かつて自動車が誕生し、馬車から自動車へガラッと変わったように、また大きく変化するかもしれません。
「ひとつのものが30年残るのはとても難しい。でもこうして30周年を迎えられた。次の新しい30年も愛していただければ」と布垣直昭館長が挨拶で語られたように、トヨタ博物館はこれからも長く愛されるような新しい姿へと生まれ変わりました。この機会にぜひ足を運んでみてください。

トヨタ博物館

■開館時間
9:30~17:00(入館受付は16:30まで)

■休館日
月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

■住所
愛知県長久手市横道41-100

■アクセス
東部丘陵線(リニモ)「芸大通駅(トヨタ博物館前)から徒歩5分

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